【富山県・岐阜県】──飛騨の道 ②
この日は郡上八幡から、東海北陸自動車道を北上します。この地域への関心はあっても、富山へ抜ける高速道の開通後と思っていました(2008年全線開通)。
山間地に高速道を通すには「トンネル+高架橋」のぜいたくな道となり、とても走りやすいも、長い坂が多いので速度に気を配る必要があります。
数多いトンネルの中でもやたらに長かった「飛騨トンネル:10,710m」は、国内3位の長さがあります。
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五箇山 上梨地区(Map)
ここは富山県になり、民謡『こきりこ節』(デデレコデン♪)の伝わる地で、右の白山神社にて「こきりこ祭り」が行われます。
白山神社はすぐ近くの白山で起こった白山信仰に由来し、古代から山を御神体とした原始的な山岳信仰が、奈良時代修験者たちによる山岳を修験の霊山とする活動から形作られます。
白山権現は、山岳信仰と修験道が融合した神仏習合の神ですが、明治期の神仏分離より白山神社とされます。
山を隔てるも距離の近い曹洞宗大本山永平寺(福井県)では、白山権現を寺の守護神・鎮守神としています。
漢字を並べ固いことを書きましたが、この写真で伝えたかったのは「神社もかやぶき屋根なんだぁ〜」と、冬の雪深さを感じた印象です。
上はかやぶき屋根の半分だけふき替えた様子。
地域の協力が必要な作業なので、人手と相談しながら「今年はこの屋根の半分」「来年は隣家の傷んだ部分」などと、屋根の傷み具合を示すパッチワークになります。
この模様は訪れた人たちに「なんでだろ〜?」と、考えてもらう格好のアピールとなることでしょう。
左は、地盤の流動化で浮き上がったのではなく、計画的に作られた消火栓で土台は1m程度あり、そこまで雪が積もるようです。
雪国での生活経験がない者はこれを見ただけで「ゴメンナサイ、わたしはここでの生活は無理です」と、白旗を上げてしまいます……
右は、かつて加賀藩の流刑地牢として使用された施設の復元(室内は三畳程度か)。
牢屋ももちろんかやぶきで窓もなく、左下に見える柱の穴が食事を差し入れる窓とされます。
五箇山 菅沼地区(Map)
合掌造りの家々を囲む田んぼは、まさに黄金色に輝いており、収穫期の安堵(あんど)が感じられます。
こんな絵こそが「桃源郷の姿か?」と、シビレました。
右の絵をしゃがんで撮る際に、シャッターを頼まれ「このアングルがいいよ」と、ひざまずいて若い娘2人の写真を撮りました。よろこんでくれればいいのですが……
ここの観光用施設には驚きです。丘の上を造成して駐車場と広場を作り、そこからエレベーターで地中にもぐり、トンネルを通り合掌造りの集落に向かいます。
道路が近く音は聞こえるも、余計なモノが目に入らず「集落のひっそり感」を堪能できるので、協力費名目の駐車料金500円も納得です。
世界遺産だから実現できた施設は、地元を愛する気持ちをしっかりアピールしています!
下は、以前橋のない川を渡るためのカゴを復元したもの。
白川郷(Map)
前述の五箇山に比べるとここのにぎわいは「さすがメジャー級世界遺産!」と驚きます。
この夜、宿で一緒になったご夫婦に「集落内に駐車場は?」とたずねられ、同じ思いだった自分の意識変化を伝えました。
集落内の駐車場を探すつもりで、集落に入る直前の信号で停止します。
停車中に集落外の駐車場に誘導する看板と、集落の雰囲気を目にし、場の空気を感じたのでしょう、信号が変わってから慌ててウインカーを出し集落外へ向かいます。
それが正解であることを、集落内を歩く側となって納得します。「ここを車が走るのはイヤだなぁ」と……
右は、鐘楼・本堂(奧)共にかやぶきの明善寺。
そもそも合掌造りの家屋が必要な五箇山や白川郷の豪雪地帯に、どうして人が暮らし始めたのだろうか。
人里離れた地には必ず「平家の落人(おちうど)伝説」が伝わるが、この付近も隠れ家にふさわしい地です。
白川郷の名が認識されたのは平安時代後期(1100年代)で、平家滅亡(1185年)と同じ年代になります(こきりこ節のいでたちや楽器には、平氏由来の印象を受けます)。
江戸時代中頃、鉱物資源に目を付けた幕府の開発目的により管理下とされ、五箇山では塩硝(火薬原料の硝酸カリウム)の秘伝製法(雑草と蚕の糞で抽出する等)が確立されます。
そんな家内工業が広まったころから、合掌造りの家が並び始めたとされます。
豪雪地帯ですから、耕作以外の収入源がなければ生活できませんが、生活は悪くなかった印象を受けました。
それにしても、メジャー世界遺産は人気があります。
今どき中国からの観光客は皆無でも、韓国からの人が多いことに驚きました。
韓国の人は冷静で、熱くなっているのは選挙アピールに領土問題を担ぎ出した大統領と、「日本たたき」を口実に、国への不満を晴らそうとする中国の人だけであることが、山間部にある世界遺産の地からよく見えてきます。
そんな外交駆け引き(宣伝活動)にお金をかけるより、世界の人から称賛される文化遺産を、よりよい環境で見てもらえることに使うべきと、この地で感じます。
韓国の人にとってこの情景というのは、とても心に響く絵であるらしく、市民レベルで相互理解を広めていくことは可能であると実感することができます。
やはり相互理解の糸口は、市民交流しかないのでしょう。
白山スーパー林道(Map)
「なぜ林道を走るのか?」と問われれば「そこに林道があるから」と答え、「何か用事でも?」には「ただ、走るために」などと、バイクで意気込んで向かったころを思い出しました。
現在では「もうここを走るチャンスは無いかも」が正直なところです。
ここは観光用に整備された有料道路(途中で引き返しても3,150円もする)で走りやすいのですが、道半ばでガケ上と谷底を目にして怖くなっちゃいました。
紅葉の季節には絶景が広がるでしょうから、大混雑するのかも知れません。
もうひとつの目的である「白山を近くで見たい!」は、雲に阻まれかなわず……
料金所のおばちゃんは「反対の料金所手前でUターンすれば片道料金だから」と教えてくれましたが、時間もないので右の「ふくべの大滝」で引き返します。
「だから何しに行ったの?」「走りたかっただけじゃ、ダメ?」
平瀬温泉(Map)
今回の旅行では、宿の料理に期待するものは無く(失礼!)、どこも安さを基準に宿を探したため、白川郷から15分程度の平瀬温泉を選びました。
午後5時ごろの到着でも山間部にある宿の室内は薄暗く、通された部屋の照明をつけると、足元に右写真の飾られた布団が敷いてあり、仰天です!
布団の上に掛けられていたのは、花嫁衣装です。
このような晴れ着を間近で目にすることはないので、まじまじと眺めさせてもらいましたが、ここにもぐり込んで寝るわけにもいかず「はて、たたみ方が分からない!」……
上に置かれた色紙の印象通り、若だんなは繊細な感じの方なのであまり突っ込めませんでしたが、料理にはきめ細やかな手が掛けられていて、こんな山奥で!(失礼)のもてなしに驚きました(料理の写真を撮る習慣がないものでスミマセン)。
翌朝、彼の母親らしき迫力ある女将(?)が、「これから『どぶろく祭り』の準備で出払うので、ビール代だけもらえませんか?」と、祭りモードで迫ってきます。
「部屋の鍵はカウンターに置いといて」と、慌ただしく出て行っちゃいます。
白川郷付近では、いわゆる「密造酒」である「どぶろく」の製造が文化として認められています。
そりゃあ、客そっちのけで気合いが入るのも当然ですし、この土地の「活力源」でしょうから、酒は飲まずともいい時に訪れたと……
追記──大滝秀治さんが亡くなられました。
自分としては、映画『あなたへ』の感想で余計なことを書いたと悔いています。
高倉健さんのNHKドキュメンタリーで、健さんが大滝さんとのシーン終了後に涙を流していた姿が忘れられません。
ありがとうございました。
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